格闘技ブームが来ている。
YouTubeで格闘家が発信し、RIZINの視聴者が増え、ジムに通う若者が増えた。格闘技はもはや、一部のマニアのものじゃない。
吃音持ちの自分が格闘技を始めたのは、このブームより少し前のことだった。きっかけは単純だった。自信をつけたかった。吃音で傷ついたメンタルを、何か別のもので補いたかった。
その経験を正直に書く。
吃音と自己肯定感の関係
吃音で育つと、自己肯定感が低くなりやすい。
うまく話せない経験が積み重なる。笑われる。無視される。伝わらない。その繰り返しが、「自分はダメだ」という感覚を育てていく。
何かで自信をつけたかった。話すこと以外で、「自分はできる」と感じられるものが欲しかった。格闘技を始めたのは、そういう動機だった。
格闘技で変わったこと
格闘技を始めてすぐに気づいたことがある。負けることへの耐性がつく、ということだ。
最初は何もできない。先輩に一方的にやられる。技が決まらない。打撃をもらう。でも、その繰り返しの中で少しずつ上達していく。
負けることが怖くなくなる。失敗することへの恐怖が薄れる。
これが、吃音と向き合う姿勢に似ていると気づいた。吃音も、失敗を積み重ねながら少しずつ改善していく。一回でうまくいかなくても、続けることが大事。格闘技で、その感覚を体で学んだ。
身体への自信もついてきた。鏡を見て、以前より引き締まった体を見る。それだけで、なんとなく背筋が伸びる。歩き方が変わる。人と目を合わせられるようになる。
でも、声は変わらなかった
正直に言う。格闘技を続けても、吃音は治らなかった。
体への自信はついた。でも、プレゼンへの苦手意識は全然変わっていなかった。体を鍛えても、話す自信は別のところから来るんだということに気づいた。
「身体を鍛えれば自信がついて吃音も治る」というのは、半分本当で半分嘘だ。
メンタルが安定して、吃音が出にくくなる場面は増えた。でも、話すこと自体への恐怖は、話す練習をしないと消えない。格闘技だけでは、その部分は補えなかった。
格闘技ブームと吃音持ちへのメッセージ
格闘技ブームで「ジムに通いたい」と思っている吃音持ちがいるなら、ぜひやってみてほしい。
身体が変わると、メンタルが変わる部分は確かにある。負けることへの耐性、失敗への恐怖の薄れ、自己肯定感の回復——それは吃音と向き合ううえでも、プラスになる。
ただ、過度な期待はしないほうがいい。格闘技は万能薬じゃない。吃音の改善には、話す練習が不可欠だ。
格闘技で自信をつけながら、同時に話す場数を踏む。その両方を続けることが、吃音と向き合ううえで効果的だと、自分の経験から言える。
格闘技から学んだ一番大切なこと
格闘技を通じて学んだ一番大切なことは、「続けることの価値」だ。
最初はボロ負けだった。でも続けた。少しずつ強くなった。完全には勝てなくても、以前の自分より確実に成長している。
吃音も同じだと思っている。完全には治らないかもしれない。でも、向き合い続けることで、確実に変わっていく。格闘技で体感したその感覚が、吃音との戦い方を教えてくれた。
格闘技ブームに乗って、ジムに行ってみてほしい。声のためじゃなくても、心のために。

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