「タイパ」という言葉が当たり前になった。タイムパフォーマンス——時間対効果を重視する価値観が、若者を中心に広がっている。
動画は倍速で見る。要約サイトで結論だけ知る。会話も、効率よく結論にたどり着くことが求められる時代になった。
吃音持ちとして、このタイパ重視の会話ブームに、正直な不安と、ある種の希望を感じている。
タイパ重視の会話は吃音持ちに厳しい
タイパを重視する会話とは、簡潔に、テンポよく、結論から話すことを求める会話だ。
「結論は何?」「要するに?」「早く言って」——そういう圧力のある会話は、吃音持ちにとって非常に厳しい。言葉が詰まる瞬間、相手は「早く話してほしい」という空気を出す。それが余計に焦りを生み、吃音を悪化させる。
タイパ重視の文化が広がるほど、吃音持ちが会話で評価されにくくなるリスクがある。「テンポが悪い」「話が長い」と判断されてしまう可能性がある。
でも、タイパは「内容の質」も重視する
ただ、タイパという考え方を丁寧に見ると、単に「速く話す」ことだけを求めているわけじゃない。
本当に効率がいい会話とは、無駄な言葉を削って、伝えたい本質だけを伝えることだ。早口で喋ることと、的確に伝えることは、実は別の話だ。
吃音があって早口で話せなくても、内容を整理して、的確な言葉を選んで伝えることができれば、それもまた「タイパの良い会話」になりうる。
事前準備という吃音持ちの武器
タイパ重視の時代に、吃音持ちが活かせる強みがある。事前に話す内容を整理しておく習慣だ。
吃音があると、咄嗟に話すことへの不安が強いため、事前に何を話すか考えておく習慣がついている人が多い。これは、タイパを重視する会話において、実は有利に働く。
要点を整理して、的確に伝える準備ができている人は、結果的に「タイパの良い話し方」をできることが多い。
テキストでの会話というタイパの最適解
タイパを最大化するコミュニケーション手段として、テキストが再評価されている。
音声で話すより、文章で要点を伝える方が、相手は自分のペースで読める。聞き返す必要もない。これは、吃音持ちが得意とする領域だ。
タイパ重視の社会は、声を出すスピードを求めているだけでなく、効率的な情報伝達を求めている。その意味では、文章力がある吃音持ちにとって、悪い流れではないと思っている。
会話の質を取り戻すために
タイパ重視の会話ブームの中で、忘れてはいけないことがある。本当に大切な会話は、効率だけでは測れないということだ。
吃音があって、ゆっくり話すことしかできなくても、その言葉に込められた誠実さや深さは、タイパでは測れない価値を持つ。
タイパ社会の中で、吃音持ちなりの会話の価値を大切にしながら、効率と誠実さのバランスを探っていきたいと思っている。

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