「次の人、前に出てきてください」
ワークショップの講師にそう言われた瞬間、心臓が跳ねた。吃音持ちが、人前で演技をする。我ながら無謀だと思った。
でも、あえてそこに飛び込んだ。
なぜ演技のワークショップに行ったのか
プレゼンや人前で話すことへの苦手意識が、どうしても消えなかった。
留学もした。バイトも続けた。面接練習も重ねた。吃音の症状は改善した。でも、大勢の前に立つ時の恐怖だけは、なかなか消えなかった。
そこで考えた。人前に立つことを、安全な環境で何度も繰り返すしかない。失敗しても笑われない場所で、失敗し続ける練習をするしかない。
それが演技のワークショップだった。
最初は恥ずかしくて死にそうだった
最初のワークショップは、本当に恥ずかしかった。
感情を表現することが求められる。声を大きく出すことが求められる。体を動かすことが求められる。普段の生活では絶対にやらないことを、人前でやらなければいけない。
吃音が出た。声が震えた。何をすればいいか分からなくなった。
でも、ワークショップの空気は優しかった。失敗しても誰も笑わない。むしろ、失敗することが前提の場所だった。
失敗できる場所の大切さ
吃音持ちにとって、「失敗できる場所」はとても貴重だ。
普段の生活では、失敗するたびに傷つく。吃ったら恥ずかしい。うまく話せなかったら申し訳ない。そういうプレッシャーの中で話している。
でも演技のワークショップでは、失敗が許されている。むしろ失敗しないと成長できない、という空気がある。
その環境に何度も身を置くことで、「失敗しても死なない」という感覚が体に染みついていく。その感覚が、日常の場面でも生きてくる。
少しずつ、人前に立つことが怖くなくなった
ワークショップを続けるうちに、変化が出てきた。
人前に立つことへの恐怖が、少しずつ薄れてきた。完全になくなったわけじゃない。でも、以前ほど怖くなくなった。
プレゼンの前に感じていたあの極度の緊張が、少し和らいだ。失敗してもいいという感覚が、体に少しずつ馴染んできた。
何でもいいから、失敗できる場所を見つけてほしい
演技じゃなくてもいい。即興スピーチの練習会でも、社会人サークルでも、なんでもいい。
失敗しても大丈夫な環境で、人前に立つ経験を積み重ねること。それが、吃音のトラウマを少しずつ上書きしていく一番の方法だと思っている。
怖くても、飛び込んでみてほしい。

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